1994(平成6)年に開館した木田金次郎美術館は、昨年11月3日で開館25周年を迎えました。開館当時、木田金次郎(1893-1962)の油彩約90点の収蔵からスタートした当館は、様々なご縁をいただきながら作品の寄託や寄贈を受け、現在は油彩約170点を数えるまでになりました。その都度、新たな木田金次郎像が判明し、館の活動も充実しています。
当館では、1954(昭和29)年9月の「岩内大火」後に再建し、今も町内に残る木田の自宅から、2015(平成27)年5月に蔵書やアトリエの資料を預かりました。いずれも木田が触れ、用いた貴重な資料です。これらの資料を当館では2015年7月の特別展示から、「アトリエ復元」として、画材などを展示室で紹介しているほか、資料に注目した企画展「木田金次郎 アトリエからの再発見」(2014年11月)、「木田金次郎の本棚」(2016年11月)を開催して参りました。
今回の展覧会では、木田の創作の舞台となったアトリエ資料から、画材を中心に注目していきます。とりわけ、3つのみかん箱に詰め込まれた、使い切った油絵の具のチューブは、おそらく自宅再建後、すなわち「岩内大火」以降に木田が用いた絵の具のほぼ全てが含まれると考えられます。今回初めて、この中の分類整理を試み、用いられている絵の具の色と数量が判明いたしました。このような分析は、他の画家でも行われたケースは少ないと思いますが、木田の制作の内面に迫る「解体新書」として、興味深い分析結果の第一報となるかと存じます。
開館から25年、「四半世紀」を経て、収蔵作品の充実などから、年々新たな作家像が明らかになる木田金次郎。アトリエにのこされた「もの」を通して、今回の展覧会が、木田の創作について様々な考えを巡らせる機会になれば幸いです。
なお、この展覧会は、好評をいただいておりました、昨年度の「秋から冬を迎える企画展」を一部増補したものです。新型コロナウイルス感染症の拡大防止のために、長期間にわたり臨時休館したことに鑑み、より多くの方に展示をご覧いただきたく、内容を継続してお贈りすることを、あらかじめお断りいたします。