1972年と73年に植田正治がはじめてヨーロッパへと出かけ撮影した作品群を紹介します。
この<音のない記憶>は、単なる旅行記ではなく、異国の風景の中に身を置いた写真家の私風景ともいえる作品群です。植田は初めての海外撮影であるにもかかわらず、人、街並み、公園、壁に貼られたポスター、ベンチなど、目の前に広がる様々な光景を夢中になって撮影しています。そしてそこに映し出された静謐な風景は、これまでの作品群と同様の表現方法を保ちながらも、新たな被写体との出会いと無垢な感性によりさらに研ぎ澄まされた映像として昇華されています。
今回は、シリーズ<音のない記憶>を中心にその前後の作品も合わせて展示いたします。