古来、旅は人を魅了してきました。旅することで人は日常生活から離れ、見慣れない風景や異なる文化に触れます。旅は私たちに新たな視点をもたらし、時に自らについて深く考えるきっかけともなります。旅することで他者との出会いを通して、自己を見出す人も少なくありません。
また、ある場所から別の場所に物理的に移動する旅だけでなく、自らの心の奥深くを探る営みや、時間を飛び越えて過去・未来へ眼差しを交差させる営みも、比喩的に“旅”と言い表すこともあります。
このたびのコレクション展では“旅”をテーマに、〈日本の旅〉、〈異国への旅〉、〈内面への旅〉、〈遙かな時への旅〉の4つのコーナーで作品を紹介します。
旅をこよなく愛し、東海道五十三次を歩いて写生した池田遙邨をはじめ、国内外を旅し、懐かしい日本の風景を描く一方、チェルノブイリ原発事故に取材した一連の作品を描いた貝原浩、明治末にハワイから北米、ヨーロッパ各国を横断し、「世界周遊実写 欧山米水帖」で彼の地の風景を紹介した御船綱手、シュールレアリスム的な表現により観る者を心の内なる世界へと誘い入れる永岡博など、多様なジャンルの作家による様々な旅の諸相をご覧いただきます。
この展覧会での旅が、未だ見知らぬ自分自身と出会うきっかけになるかもしれません。