油絵を描いていた棟方志功が板画を始めるようになったのは、川上澄生の版画作品〈初夏の風〉を見たことがきっかけでした。棟方の出世作と言える「大和し美し」は、佐藤一英の詩に感動して制作したもので、棟方作品の中でも傑作のひとつに数えられています。また、疎開していた富山県福光町(現・南砺市)で聞いた河童伝説をもとに〈瞞着川〉という物語を作り、更にそれを板画にするなど、棟方作品には詩歌に触発されて生まれたものがたくさんあります。秋の展示では、棟方の心に沁み、創作意欲を湧き出させた文学作品に触発されて生まれた作品を紹介いたします。