日本写真家協会(JPS)は、創立70周年の節目に、写真史「日本の現代写真1985-2015」の編纂と写真展を催すことにした。過去に刊行した、『日本写真史1840~1945』、『日本現代写真史1945~1970』、『日本現代写真史1945~95』に続く4冊目の写真史であり、フィルムからデジタルへと表現手段が変化したことで、写真を取り巻く環境が劇的に変化した直近の30年を総括する企画である。
本展では編纂対象とする30年を、第1期:1985年~1994年、第2期:1995年~2004年、第3期:2005年~20015年と10年ごとの3期に分類した。
第1期の時代は、経済の拡大とともに、世界的にグラフジャーナリズムが最も栄えた時代と言える。次いで第2期で特筆すべきことは、2000年頃から急速に進んだデジタルカメラの性能向上により、フィルムカメラからデジタルへの切り替えが始まったことである。第3期になると、デジタルカメラの進化は著しく、機種が更新される度に性能は格段の進化を遂げ、世界で流通するカメラがデジタルに切り替わり、日本製デジタルカメラが世界市場を席巻した時代でもあった。
新型コロナウイルスの感染拡大により、世界はいま未曾有の危機に直面している。未知の世界と触れることで刺激を受け、作品を創り続けてきた多くの写真家が、かつて経験したことのない困難に直面させられている。写真を取り巻く環境が激変し、更に加速してゆくこの時代に、この30年間に活躍した写真家152人の代表作を選び、総括しておくことは日本の写真史にとっても、大変意義のあることと考える。
どのような時代になろうとも、世界を、森羅万象をしっかり見つめること、そして何よりも写真の底力を信じることで、写真家は時代を乗り越えてゆくのである。