紫綬褒章と勲四等旭日小綬章を受章し、文化功労者にも選ばれた石元泰博(1921-2012)は、モダンデザインの思想をシカゴで学び、その厳格な造形意識から、国際的な評価を得た写真家です。
2021年の生誕100年を祝し、東京都写真美術館、高知県美術館、東京オペラシティアートギャラリーの共同企画で展覧会を開催し、石元泰博の多彩な仕事を過去最大のスケールでつまびらかにします。
先陣を切る東京都写真美術館ではミッドキャリアから晩年の作品を「生命体としての都市」という視点からひもときます。石元は『シカゴ,シカゴ』、『都市(映像の現代8)』で街と生きる人々へ視線を向け、独自の都市像を世に問いました。そして、物質や空間のミクロな断片を有機的に積み重ねた『刻 moment』へと昇華し、往来する人々を切り撮る『シブヤ、シブヤ』へと拡張しました。この挑戦を支えたのが1959年頃から取り組み続けた〈多重露光〉シリーズです。
これらの多角的な仕事を通して、石元は「生命体としての都市」を写真表現として作り上げました。本展は、石元泰博の仕事という生命体で紡がれた都市を展覧する初めての試みです。
なお、東京オペラシティアートギャラリーでは、新旧にわたる多様な被写体を貫く石元の眼差しに着目した「伝統と近代」を開催。その後、高知県立美術館にて石元泰博の全貌を振り返る大回顧展を行います。