故植野藤次郎氏が創設した当美術館には、氏が蒐集した1980年代を中心とした改革開放の時代を背景に描かれた330点余りの中国絵画が所蔵されています。それらはいずれも中国近代画壇の代表的な斉(さい) 白石(はくせき)(1864~1957)や李(り) 可染(かせん)(1907~1989)、傅(ふ) 抱石(ほうせき)(1904~1965)などに直接師事した作家の作品を中心としており、李 行簡もその一人です。
李 行簡は、1937年湖北省に生まれ、1958年中央美術学院中国画科に入学し、李 可染に師事して水墨・山水画を専攻しました。1963年に卒業後も母校に留まり、写生を中心に創作を行いました。江南地域の風物や貴州省、四川省などの苗(ミャオ)族を中心とした少数民族の民俗を丹念に取材し写生を重ね、それを「詩意」と濃密な筆致で表現しています。現在は北米に在住し、創作活動を続けています。
本展では、当館所蔵の1980年前後制作の作品に併せて、1990年代から2000年代にかけて日本への何度かの歴訪時に姫路市に滞在して制作した作品が所蔵されている李 行簡美術館より屏風、衝立、襖を含む約50点の作品を借用・展示し、氏が旺盛に制作をおこなっていた時期の作品を中心にその画業を紹介します。