三月三日。この日に男女一対の雛人形を飾り、雛節供(ひなせっく)として祝うようになったのは江戸時代に入ってからで、付属する人形や雛道具の種類も徐々に増えていきました。虎屋十四代店主黒川光景(くろかわみつかげ)(1871~1957)が、娘・算子(かずこ)のために揃(そろ)えた雛人形と雛道具は、往時の華やぎを伝える、質・量共に優れたコレクションです。雛人形は品格漂う京雛。一方、雛道具の大半は上野池之端の七澤屋(ななさわや)製で、極小の調度が多種多様に揃います。本展ではこれらと同時に、根津美術館で所蔵する婚礼調度とミニチュアの雛道具も併せてご紹介します。雛道具の原型とされる婚礼調度とミニチュアの雛道具とを比較しながら、江戸の細密工芸の世界をお楽しみください。