ごあいさつ
公益財団法人常陽藝文センターでは郷土作家展シリーズ第264回として、「縄文からの風 植竹敏展」を開催いたします。
陶芸家・植竹敏さんは、抽象的で感性重視の作品を制作しながら多くの後進を育てた故・中野晃嗣(こうじ)の、ほぼ最後の弟子にあたります。時間を自由に使う仕事をしたいという動機で入った陶芸の世界でしたが、中野の個性を尊重する指導の下、熱心に研鑽を積んでいきます。昭和59年に独立、現在は日本工芸会を中心に出品を続けています。
植竹さんは縄文時代の造形に強く惹かれるといいます。五千年以上も前に縄文人が土と火を用いてエネルギッシュな器を造形していたこと、そして今も同じ原理で陶芸が続けられているということへの驚きと共感から、火焔土器の強烈な造形に通じる文様を模索し、掻き落としと象嵌(ぞうがん)の技法に行き着きました。
赤と茶あるいは赤と青など鮮やかな二色を用いて燃え盛る炎を思わせる半円を連ねた文様は、掻き落としの技法によって表現されています。掻き落としは成形した粘土の上に化粧土を塗り、乾いてから一部を引っ掻いて模様をつける加飾方法です。掻き落とした部分は地の土の色、残した部分は化粧土の色になり、わずかな凹凸が出て、力強い色の対比が生まれます。
一方、象嵌は粘土の上を削った溝に化粧土を埋め込む方法で、表面は平らになり、明快な線描写に向いています。赤く発色する鉄化粧を施した蓋付きの筥(はこ)や五角器に施された同心円の連続が渦を巻くような文様は、循環する静なるエネルギーを感じさせます。
今展では植竹さんの日本工芸会出品作を中心に、優品21点を二期に分けて展示します。
公益財団法人常陽襲文センター