芸術の主題としての<風景>が西洋から日本にもたらされたのは、油画技法や写真術が輸入された時期に同じく、江戸末期のことでした。以来<風景>は、近代芸術の展開とともに重要な領域となり、単なる「対象」であることを超え、芸術家たちの創造の源泉となって、彼/彼女らの自然観、時代観、世界観を表象してゆくことになりました。
本展では、当館の収蔵品を中心に、<風景>を主題とした国内作家の絵画や写真作品など合計約280点を展覧し、明治期以来この主題をめぐる表現が、時代とともにどのような変化を見せてきたか、その一端をご紹介します。
記録としての<風景>や、西欧への憧憬とともに描いた写実的<風景>、抽象化された<風景>、心的・内的な空想世界の<風景>、自然礼賛の<風景>、都市の喧騒をそのまま写し出したスナップ写真の<風景>など、その様相は実に多様なものです。さまざまな<風景たち>の饗宴をお楽しみください。
主な出品作家:高橋源吉、小堀四郎、向井潤吉、師岡宏次、村井正誠、宮本隆司ほか