野に咲く一輪の花、季節のうつろいとともに変化する木々や山脈。古来より花や風景は作家が好んで描いた題材でした。本展覧会は、近代を代表する日本画家が描いた花や風景と、杉浦非水による美しい植物の木版画を展示し、作家がとらえた日本の自然美をご覧頂く展覧会です。
第一部「近代日本画の精華」では、当館が所蔵する近代日本画コレクションをご覧頂きます。本コレクションは実業家・故鈴木始一氏が蒐集したもので、竹内栖鳳、福田平八郎、前田青邨、奥村土牛、小倉遊亀など、明治から昭和の日本を代表する作家が名を連ねています。
第二部「モダンデザインの先駆者・杉浦非水の描いた花々」でご紹介する杉浦非水(1876-1965)は、明治後期から昭和にかけて活躍した図案家(デザイナー)です。東京美術学校日本画撰科(現・東京芸術大学)に学び、洋画家・黒田清輝との出会いから図案家の道に進みます。卒業後は印刷会社や新聞社、三越百貨店に在籍し、ポスターや雑誌の表紙、書籍の装幀、煙草のパッケージなど多岐にわたるデザインを手がけています。本展賢会でご覧頂く≪非水百花譜》は桜やバラ、百合など身近な草花を非水が図案化した木版画集で、写生に基づいた緻密さと色鮮やかな色彩が魅力です。
非水と日本画家、表現方法は異なりますが、同時代に活躍した作家が描いた美しく繊細な花々の木版画と日本画の清謐な空間から、一足早い春の息吹をお楽しみください。