主にルネサンス以降、遠近法は西洋階がの第一の前提でした。それは近代自然科学の成果のひとつであり、従って単に絵画の図法であるというだけではなく、それ自体が近代の大きな思想でした。そして私たちは遠近法的な絵画空間を普遍の真理であり自明のことであるかのように受け入れてきましたが、古今東西の空間表現の多様性を見てみると、必ずしもそうとは限りません。中世ヨーロッパや中国、また日本にも、それぞれ独自の「遠近法」がありました。とは言え西洋の近代遠近法は、私たちの視覚世界を頑固に条件づけ、制約し続けていたと言えます。そしてこのような遠近法の束縛から逃れることによって、初めて20世紀の絵画が成立したとも言えるでしょう。
本展では、このような遠近法について、強調や歪み、錯綜を示す作品やそれに関連しつつ様々に展開する作品を現代の視点から紹介します。絵画、写真、立体、インスタレーションなど多様なジャンルから、国内外の14人の作家と1組のコラボレーションによって15の表現の範囲を越えて現在もなお様々に姿を変えて存在しています。そしてこのこと自体が、遠近法の持つ問題の大きさを物語っていると言えるでしょう。