カエデの種子が飛行機に、木の枝が遠吠えする犬に変容する、不思議なイメージ。京都で活躍した前衛画家、北脇昇(1901-1951)は、身近な植物などから想像力をふくらませて、独自の幻想的な絵を描きました。しかしながら彼の活躍した1930年代から40年代は、日本は戦中・戦後の激動の時代。そうした状況の中で次第に彼は、混迷する世界の背後にひそむ法則を解き明かすことをめざすようになります。そして数学やゲーテの自然科学や古代中国の易などを駆使して、独自の図式的な絵画を生み出しました。
一粒の種子が発芽し、成長をとげ、開花し、そして新たな種子を生み出すことに、天地の法則すべてが凝縮されていることを見出そうとした彼の、他に類をみない制作の歩みを紹介します。