名古屋市美術館では毎年12月に来館者の皆さんへのクリスマス・プレゼントとして、小さくても見ごたえのある常設企画展を開催してきました。
今年のクリスマス・ショウは、土渕信彦氏コレクションによる「生誕100年記念 瀧口修造:オートテマティスムの彼岸」展を開催します。
瀧口修造(1903~1979)は、日本の近代・現代美術をリードし続けた詩人・美術評論家としてい有名ですが、戦後1960年代から1970年代にかけて断続的に自らも言わばひとりの造形作家として、オートマティスム(自動筆記)による数多くの造形作品を制作しました。万年筆による文字とも記号ともつかないデッサンをはじめとして、絵具の飛沫によるデッサン、エナメルを滴らせたり絵具を滲ませたりした水彩、紙に絵具を押し付けて転写するデカルコマニー、紙を炎にかざして焦がしたバーンド・ドローイング、モーターによる回転線描のロトデッサンなど。これらの多彩多様な作品は、言葉による数々の「詩的実験」にも比肩すべき「オートマティスムの彼岸」における造形であり、修造が生涯をかけて追い求めたシュルレアリスムの精神の具現と言えましょう。
本展では、これまであまり紹介されることのなかった造形作品を通して、「言葉よりもっと源流にさかのぼりながら、実在の未来の生命をたぐろうとする」シュルレアリスト瀧口修造の実験精神を紹介するものです。