このたび、山種美術館が広尾に移転し開館してから10周年を迎えたことを記念して、当館が所蔵する、日本画家・上村松園(うえむらしょうえん)(1875-1949)の作品を一挙公開する特別展を開催します。当館創立者の山﨑種二(やまざきたねじ)(1893-1983)は、松園と親しく交流しながら作品を蒐集しました。《蛍》、《砧(きぬた)》、《牡丹雪》などの代表作を含む当館所蔵の作品計18点は、屈指の松園コレクションとして知られます。
京都で生まれ育った松園は、江戸や明治の風俗、和漢の古典に取材した女性像などを描き、数々の展覧会に出品を重ねて活躍します。美人画の名手として高く評価され、1948(昭和23)年には女性として初めて文化勲章を受章しました。松園が生涯にわたって手がけた気品ある清澄な美人画は、今なお多くの人々に愛されています。
本展では、松園と同時代に活躍し「西の松園、東の清方(きよかた)」と並び称された鏑木(かぶらき)清方や、その弟子の伊藤深水(いとうしんすい)の美人画、さらに村上華岳(むらかみかがく)、小倉遊亀(おぐらゆき)、橋本明治(はしもとめいじ)などの日本画家が描いた、多彩な女性像をご紹介します。松園の美人画とともに、近代・現代のさまざまな画家たちが女性の姿を描き出した作品をご覧いただきながら、日本画における美人画の世界の豊かな広がりや、その表現の展開をお楽しみいただければ幸いです。