原宿にある浮世絵専門の美術館・太田記念美術館は、かつて東邦生命相互保険会社の社長を務めた五代太田清藏(1893~1977)が生涯に渡って蒐集した浮世絵を中心とする、1万4千点のコレクションを所蔵しています。当館は昭和55年(1980)1月に原宿でオープンして以来、都内でも数少ない浮世絵専門美術館として活動を続け、2020年1月に開館40周年を迎えます。
本展では開館40周年を記念して、当館の幅広い所蔵の中から、肉筆画の名品を選りすぐって公開いたします。絵師が下絵を描き、彫師、摺師との分業によって生み出される浮世絵版画と比べ、肉筆画は絵師が完成まで手作業で仕上げる一点物。肉筆画からは、絵師たちの生の筆致や技量をうかがい知ることができます。
初期浮世絵の菱川師宣からはじまり、鳥居清長や喜多川歌麿、葛飾北斎、歌川広重といった有名絵師たち、明治時代に活躍した小林清親、月岡芳年まで、長い浮世絵の歴史を彩る、肉筆画の名品が勢揃いいたします。中でも、葛飾北斎がその没年に描いた傑作「雨中の虎」、そして北斎の娘であり、世界で十数点しか作品の知られていない葛飾応為の名品「吉原格子先の図」の同時公開。父と娘、二人の天才絵師が競演します。