人々と美術を結ぶ架け橋となることを目指す展覧会シリーズ「アートの風」。第9回目となる2019年のゲストアーティストは坂﨑隆一です。
坂﨑は福岡県古賀市を拠点にしてアーティスト活動をする一方で、地域の学校でのボランティア活動や、市役所などと連携して地域の課題に取り組む活動を積極的に行っています。
暮らしの中に溶け込んだそれらの活動は、一見すると美術とは関係ないものに見えますが、実は坂﨑特有のものごとを新たな角度から見る視点、つまり「裏を返して」見るまなざしに支えられています。そしてそのまなざしが坂﨑の美術活動の根本でもあるのです。
本展は、坂﨑のまなざしを小国町にインストールするところから始まりました。坂﨑が注目したのは、熊本県立小国高等学校。「天然空気清浄器」(坂﨑談)の中で暮らす小国の若者たちは一体どんなことを考えているんだろう。そこで坂﨑は、「アートプロジェクト☆裏入学」と題して小国高校への1日入学や校内での壁画制作などを行い、高校生の日常の中にじわりと潜入しながら夏を過ごしました。
本展では、その活動に通底する坂﨑の目線を展示します。展示は美術館だけでなく、町内各所に点在します。坂﨑がまなざしたもの、出会ったものをたどっているうちに、気がついたらみなさんが小国高校生や小国町のとりこになり、うっかりミイラ取りがミイラになってしまうことが果たして目論まれているのかいないのか。ご覧になって確かめてみてください。