1951年(昭和26年)の開館以来、版画は当美術館の展示・収集において洋画や彫刻、日本画と並ぶ重要な位置を占めてきました。北方ルネサンスをはじめとする西洋版画、魯迅が指導的役割を果たした中国の近代木版画、そして日本の近・現代版画と、その収集体系には当館の姿勢と歴史が反映されています。
現代版画は、1950年代におけるヴェネツィアやサンパウロといった主要国際ビエンナーレでの相次ぐ受賞に見られるように、20世紀後半の美術界で日本が最も早く世界的な評価を得たジャンルと言えます。技法と表現の歴史性に注がれる視線を十分に認識しながら、多くの作家たちが様々な技法を開拓し、豊かな表現を展開してきました。同時に、他のジャンル同様、そこには版画―Print―という概念そのものの変容、そして脱領域的な作家たちの試行がさまざまな形で立ち現れています。本展は、こうした歴史性を踏まえつつ、特に近年の新所蔵作品を中心に、版画をめぐる現況を展望し、今後の方向性について考えようとするものです。