絵画表現の主題として「美人画」があります。この言葉を冠した展覧会からは麗しき女性の姿を描いた作品群がイメージされます。またこの主題のうちには、歌舞伎などに題材を得た女形(おやま)の姿を美人に見立てている場合もあり、多様な女性表現が内包されています。男女を問わず人物画の魅力は、単に端正な容姿の美しさにあるのではなく、心の内にあるさまざまな戦(そよ)ぎ、いわば人生が表出していることにあります。とくに女性表現においては、ときに哀愁を、またときに官能性を、さらにはおどろおどろしい毒気を帯びることもあります。心地良さを超え、正対できないほどの激しい心の動きがその全姿に生々しく表現されている作品もあります。
この容貌と精神の美醜を超えた女性表現は、女性の画家が多くを生み出しているように思えます。このたびの企画では、上村松園、島成園、木谷千種、和気春光、村田織江、金谷朱尾子などが描いた「女」を中心に、鏑木清方、大林千萬樹、粥川伸二、岡本神草、上島鳳山などの作品を交えた約70点により、多彩な女性表現をご紹介します。心の戦ぎを発見していただければ幸いです。