1988年、岐阜県に生まれた大平由香里は東北で日本画を学んだのち、山梨県での活動を経て、近年は別府市を拠点に制作を続けてきました。別府市に移り住むまでの日々の大半を山に囲まれた土地で過ごしてきた大平の作品の多くには、圧倒的な存在感を放つ山塊が登場します。山塊をはじめ、自然界に鎮座する命の源泉を日本画の伝統と大胆なアイデアによって描いた作品からは、森羅万象が織り成す世界の奥深さと、その一部を成す私たちの日常の尊さと儚さが伝わってきます。8月からは、「アーティスト・イン・レジデンスつなぎ2019」の招聘作家として約4か月間、津奈木町で人々や自然と交わりながら制作に臨みました。集落に面した海は穏やかですが、心を澄ますと自然のざわめきとともに地球の胎動が海鳴りのように響いてきたといいます。海と山に囲まれた津奈木町での日々は大平の心にどのように映ったのでしょうか。本展では今回の滞在で描いた新作約20点を展示します。