明治期開設の第六十六銀行を祖とする広島銀行は、苛烈な被爆体験を経たヒロシマの戦後復興を牽引しつつ、さらにその文化的貢献を図って、積極的に美術作品のコレクションを続けています。その内容は、日本の近代絵画を中心に、フランス近代絵画等の著名な作家の西洋画をも含んでおり、モネ、ルノワール等の印象派の作品をはじめ、国内外の高名な作家の作品群を所蔵されています。そして、それらの作品を公開する目的で、1978年に設立されたのが、この度、本展にて紹介する「ひろしま美術館」です。
産業革命後、飛躍的な工業化社会を迎え市民社会が成熟を見せ初めた19世紀後半の西欧において大きな影響力をもった芸術表現の潮流であるいわゆる印象派。当初は揶揄の意をこめた呼称も、いまでは東洋の片隅にある日本においては、西洋絵画と同義に巷間では使われています。
日本でも明治維新後留学生を通じて西洋文物の収集に努めた維新政府により、文化芸術の分野において直接にふれたのが、印象派周辺の画家たちであり、後に貴族院議員となった洋画家の黒田清輝は、公教育でも指導的役割を果たし、自身が創設に尽力した東京美術学校西洋画科からは印象派の流れを受けた外光派と呼ばれる一群の画家たちが育ちました。
本展では、当美術館の開館25周年を記念し、また設立から40年を迎えたひろしま美術館が所蔵する華麗なコレクションから、印象派を中心とするフランス近代絵画と、その影響を受けた日本の近代洋画の発展の歩みを見つめる作品の数々を紹介いたします。