「板硝子すなわち窓ガラスの積層。つまり、窓ガラスを何枚か重ねて一体化する…
果たして、そのようなことが可能なのだろうか? そんなもの、見たこともないのだから…。」
(作家の言葉より 出典:瀧川嘉子ブログ『みないで』、2010年3月9日)
瀧川嘉子(1937-)は、現代日本を代表するガラス彫刻家です。10歳の時から画家の村井正誠に長く師事し、油彩をはじめ、さまざまな素材による立体造形の基礎を身につけました。慶應義塾大学美学美術史学科に在学中、モダンアート協会などに出品。その後、ニューヨーク大学大学院で美術史を修め、帰国後は絵画の個展活動を展開します。
1970年頃から板ガラスの持つ可能性に注目し、やがて板ガラスを面ではなく立体としてとらえる新たな取り組みを開始。試行錯誤の末、1981年には、板ガラスによる立体造形の個展「光と迷宮」展を開催しました。
以後20年以上にわたり、工業用板ガラスを積層して構築するという、世界的にもほとんど類例のない独自の制作手法を通して、ガラス彫刻の新境地を切り拓いてきました。
屈折光や反射光、透過光など光によって生じる無限の変容、また「実体と虚像」「存在と無」といった、相反する性質を併せ持つガラスの両義性を追究したその作品は国際的にも高く評価されています。
本展では、初期から2000年代にいたる彫刻18点に素描・版画を加え、瀧川嘉子の造形世界をご紹介します。