松樹路人(1927-2017)は、北海道羽幌町出身の戦後日本洋画壇を代表する画家の一人です。父の転勤により道内で少年時代を過ごし、高校生の時、一家で上京し、画家を志します。東京美術学校(現・東京藝術大学)卒業後、1960年には独立美術協会会員に推挙され、同協会を中心に作品を発表。また、1970-97年まで武蔵野美術大学で教鞭を執り、後進の指導にも当たりました。
1950年代から60年代にかけて、構成的な造形表現や、社会的なテーマを描いた作品を残しますが、70年代にはそれまでの画風とは決別した白を基調とする静物画や肖像画を制作し、静謐で抒情性に富んだ作風を確立します。80年代以降は身近なモチーフである家族、美術学校、アトリエ、都市空間、北海道の風景を主題とする作品に取り組みました。2000年代からは、イメージの対象がより作家の心の中に向けられるようになり、作家の心象風景とも言える作品群が生み出されていきます。
本展では、松樹路人が見つめ続けた内奥の世界をその初期から晩年にいたる絵画や素描17点によりご紹介します。