坂田和實(1945- )は1973年に目白の古道具店「古道具坂田」を開き、「普段使いの日常品」に着目し、独特の審美眼を向け続けた品々を蒐集、紹介し続けることで共感者を増やし、その美学も浸透していきました。そしてそれらは古道具ばかりでなく、雑貨、ファッション、インテリアなど多方面にわたり影響を与えました。決して高名でも、確立された価値や様式でもない「無名のものたちによる妙」は私たちを魅了します。
この展覧会では、坂田和實の蒐集による、洋の東西や幅広い年代にまたがる時空を越えて遺された古布たちに焦点を当てます。人間が生まれて初めて触れる素材といわれる「布」(繊維)による生産物は、日常生活の道具として、また祈りの対象としてその造形と表現が見出されてきた古布たちです。そしてそれらと関わりのある古道具とともに展示します。観る者や展示空間を体験する者にとって、古布たちとの出会いを楽しめる機会となることでしょう。