1928年,初の国立デザイン指導機関として仙台に商工省工芸指導所が設立され,1933年には来日中のドイツ人建築家ブルーノ・タウト(1880-1938)が顧問に招かれて剣持勇(1912-1971)らの指導にあたります。また建築家アントニン・レーモンド(1888-1976)とインテリア・デザイナーノエミ・レーモンド(1889-1980)夫妻が,高崎の芸術文化を支援する実業家・井上房一郎(1898-1993)と出会ったのも同じ年でした。翌年,井上はタウトを高崎に迎え,銀座に出店した家具工芸店「ミラテス」でタウトがデザインした工芸品を販売します。この時代,世界そして日本各地で,モダンデザインに託して新しい上質な暮らしを夢見た人々の交流がありました。
近代産業と科学は大量生産を可能とし,装飾美に代わって合理的な機能美を持つモダンデザインを生み出しました。国際的に普及していくモダンデザインを,日本の暮らし方や風土になじませようと模索する日本の工芸関係者のまなざしと,世界的な建築家やデザイナーが,日本建築と意匠に近代性を見出したまなざしは重なり合うものでした。そのなかから,やがて機能主義におさまりきらない卓越した作品が生まれていきます。かれらの夢は,戦後どのように育ち受け継がれたのでしょうか。
ブルーノ・タウト,井上房一郎,アントニン&ノエミ・レーモンド夫妻,インテリアデザイナー剣持勇,家具デザイナーのジョージ・ナカシマ(1905-1990),彫刻家イサム・ノグチ(1904-1988)による,1930-60年代の工芸品,家具,建築の図面,模型,写真など多彩な作品資料約160点をご覧いただきます。