近年、美術館活動を通したアートコミュニケーションの重要性が広く認識され、さまざまな領域でとりいれられています。この状況を踏まえて、本展開催にあたり「美術館と作家、そして観客との関係」、「地域社会との接点」を中心に問題を提起し、市街地と隣接地の2館連携による新たなアートプロジェクト及び多様な価値観を内包し、創り出された独創的作品の展示構成を通じ考察してみるという試みを持ってスタートしました。展覧会は作家、作品の存在があって初めて成立し、作家同士や作家と観客が輝きを放ち、活動にインパクトを与えたり、新しいコラボレーションが生まれるなどコミュニケーションも深まるととらえています。出展作家は宮城県内を拠点に、国内外で広く発表活動を行っています。ベテランから若手まで年齢差が大きく、生きる背景となった社会情勢も異なり視座もさまざまですが、クリエイティブでチャレンジングという点で共通しています。また、2館による同一企画の接触やコミュニケーションは「地域社会との接点」としてきわめて重要と考えます。双方の美術館への行程中、心に映える秋から初冬の表情は自然の演出による美術館への誘導、壮大なアプローチとして楽しんで欲しいと願っています。第1会場のカメイ美術館は仕切りのない広いワンフロアに、跡部邦明/川村香月/斉藤文春/佐々木正芳/佐々木克真/樋口佳絵/森敏美、7人の作品展示をします。第2会場の秋保の杜 佐々木美術館&人形館は、4つの独立した展示スペースに、坂本和之/田村政晴/本田崇/山口裕子、4人の作品展示をします。
大場尚文(インデペンデントキュレーター)