季節は秋、一連の雁が旅立ち、白鷺が舞い降りようとしています。ここは紅葉の名所、京都・高雄。一面の鮮やかな紅葉の向こうには、厚い雲をへだてて神護寺の宝塔の朱が映えています。左手の雲間にのぞく愛宕社の峰にはもう冬の気配が近づいており、紅葉と雪の白さが美しく対比しています。群青の清滝川の右岸には秋草が咲き誇って、洒落た衣装の女性たちと子供らが寛ぎながら楓を愛でています。この屏風には当時の衣装、喫茶や舞、飲食などの風習が活き活きと描き出されています。一服一銭が茶を売り、男達が酒を呑みながら謡い舞う。橋上では男が笛を奏で、そのたもとには稚児をともなった僧侶らがそぞろ歩く…。
この屏風が描かれたのは応仁の乱によって荒れ果ててしまった都がやっと復興しはじめた頃。この頃ようやく人びとは平和をふたたび謳歌しはじめました。この屏風は楽しげな風俗画であるとともに、そうした美しい平和の象徴でもあるのです。