伊丹市立美術館では、延宝2年(1674)に建てられた旧岡田家住宅の日本最古の木造酒蔵を会場に現代彫刻展を今秋も開催します。この酒蔵は、酒造で栄えた伊丹の往時をしのばせる旧岡田家住宅の一部であり、重要文化財の指定を受けた趣のある建造物です。一昨年、一般公開を機に当館ではここを舞台として、毎年現代美術の展覧会を企画してきました。今年はネオン管や蛍光管を1968年頃から作品の一部に取り入れ、活動をしている倉重光則(1946年生まれ)をとりあげます。ネオン管等の発光に快感を覚えた倉重は、やがて光と物体、物質とのかかわりを追及しだし、近年は絵画からフレームだけを抽出したような構成で光そのものを生命体にみたてた作品を制作しています。
私たちは、彼の創出したライト・アート(光の芸術)の空間を自由に回遊しながら、未知なる体験を味わうことでしょう。さらに酒蔵の空間に佇む私たち自身にも出会うに違いありません。倉重が純粋に創出しようとしているのは、作品が存在し、その作品と出会うプロセスなのです。相互の空間に身を委ね、光の芸術が彩る酒蔵に醸し出される美酒を楽しむことができるでしょう。
会場:旧岡田家住宅(酒蔵)
※伊丹市立美術館の隣