AKI INOMATAは、生きものの観察を通して作品をつくる美術家です。代表作である《やどかりに「やど」をわたしてみる》は、殻を引っ越していく習性を持つやどかりに、世界の都市のミニチュアをかたどった自作の「やど」を提供するプロジェクトです。この作品はインターネットでの動画再生回数が2400万回を超えるなど、全世界で大きな反響を呼びました。ここに見られるようなINOMATAの自然科学的手法、またCTスキャンや3Dプリンターなど先端的技術をもちいる実践は、美術の領域を超え、私たちの生きる環境に新しい視野をもたらすものとして注目を集めています。 本展にはやどかりの作品のほか、ミノムシに女性服の端切れをまとってもらう作品、東日本大震災後のアサリを観察した作品などが展示され、生きものとの協業を通して感じられる世界を表現します。また、かつて十和田も産地であった、南部馬をテーマにした新作も発表されます。 展覧会タイトルの「Sigficant Otherness(重要な他者性)」は、科学史家ダナ・ハラウェイが提唱したコンセプトで、地球上に生きる生物種の共生関係を見つめ直そうというものです。INOMATAのユーモアある表現を通して、生きものと共にあることの豊かさを感じていただければ幸いです。