曲亭馬琴(1767~1848)が著した『南総里見八犬伝』は、安房国里見家を題材にした長編伝奇小説です。文化11年(1814)から天保13年(1842)までの28年にわたり刊行された馬琴畢生の大作で、全編98巻106冊に及びます。物語の舞台は室町時代の終わり、里見家の姫・伏姫(ふせひめ)の持つ数珠から八つの玉が飛び散り、十数年後、玉と牡丹形の痣(あざ)を持つ八人の若者、すなわち八犬士が現れ、不思議な霊力に導かれて互いに出会い里見家のために戦います。個性豊かな八犬士が困難を乗り越え活躍する勧善懲悪の物語は人々の共感を呼び、歌舞伎となり、浮世絵が多く制作され、「芳流閣の闘い」などの名場面が生まれました。明治以降も人気は衰えず、現代に至るまで人形劇や映画、ドラマ、漫画、ゲームとなって、大人から子どもまで世代を問わず親しまれています。
このたびの展覧会では、壮大で奇想天外な物語を浮世絵でたどり、人々を夢中にさせた八犬伝の魅力に迫ります。