美のかなしみと、信仰と
今から100年前、宗教的感情にみちた作品を描き、20歳2ヵ月で夭折した画家・関根正二(1899-1919)。16歳でデビューし、19歳のときに描いた《信仰の悲しみ》(重要文化財)が二科展樗牛賞(ちょぎゅうしょう)を受けたのも束の間、翌年スペイン風邪で急逝してしまったのです。この展覧会は、新発見の作品や資料を含む、過去最大の回顧展となります。
関根正二の魅力は、《信仰の悲しみ》、《神の祈り》、《三星》、《子供》などにみられる、朱や深い青緑などの鮮烈な色彩と、独自の宗教観からくる幻想的で謎めいた絵画世界にあるでしょう。彼自身は福島県白河に生まれ、東京移住後ごく短期間美術教育を受けただけですが、対象を刻み込む卓越した素描力は天性のものと思われます。
展覧会は、関根作品約100点、資料約20点、書簡約40点に加えて、久米正雄、素木しづ、佐藤春夫などの文学者や、伊東深水、河野通勢、東郷青児、安井曾太郎、上野山清貢、村山槐多ら同時代画家の作品資料約50点をあわせて展示し、大正という時代の熱気と興奮を味わっていただけたらさいわいです。描くことと引き替えに生命をも差し出した画家の純粋な魂、まだ誰も解いたことのない関根正二の絵画の秘密にふれてみませんか。