独自の書風で書道界に「かな書」の変革をもたらした深山龍洞(みやまりゅうどう)[本名:深山茂](1903-1980)は、神戸を本拠地として、その書作活動を行いました。伝統的なかな文字に漢字の力強さを取り入れ、ダイナミックかつ優美な作品を数多く遺しており、当館にもおよそ100点にもおよぶ作品が受贈、収蔵されています。
龍洞は、平安朝の繊細な小字から書作を開始しますが、昭和30年大半ば頃から、従来のかなの既成概念の枠を超えた大字かなを用いた書風を築きはじめます。その一環として、平安時代中期の能書家で、三跡の一人でもある藤原佐理(すけまさ)の漢字書風をかなに取り入れるという斬新な試みをはじめ、平安がない先行する古代がなのもつ力強さ、美しさの追求も行い、奈良時代の正倉院文書にかなの原点を見出しました。
今年(2003年)は、その生誕100周年にあたります。展覧会では、これまで出展機会の少なかった作品にスポットをあて、屏風などの対策を中心に、龍洞の書作の足跡を辿りながら、華麗なかな書の世界を展観します。