「気配」。見えるものでも、触れるものでもなく、何となく感じるもの。はじめて訪れた街で感じる印象は、場所が持っている記憶や受け継がれてきた伝統、また人々の活動が醸し出す「気配」かもしれません。本展では、入江早耶、小林椋、中島伽耶子の3人の作家がそれぞれの表現方法で“向こう側”に見えないなにかを感じさせる「気配」を持った作品を展開します。
入江は写真や絵画、印刷で記されたものを、消しゴムで消し取り、その消しカスで記されたものを立体的に表現する作品を制作してきました。平面にあった“記憶”を丁寧に練り上げ、存在感を浮かび上がらせます。小林はカラフルなオブジェ、カメラ、モニターなどを複雑に配置し、映すもの、映るものなどが絡まりながら可動する装置を展開。シンプルで機械的な動きは、繋がることでまるで生き物のように意思を持っている“生命”を感じます。中島は、日々刻々と変化していく太陽の光を取り込み、偶然性によって変わる様子に時の流れを感じる場を創り出します。内側と外側、日常と非日常、明と暗など重層的な状況を提示し、場の持つ記憶まであぶり出すような“空間”を構築します。
「気配」は観る側の意識や経験や感覚などの違いで、その感じ方も様々です。ぜひ、「気配」とその先にある何かの存在を感じてください。