タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムは、9月7日(土)から10月26日(土)まで、武田陽介個展「Ash without fire here」を開催いたします。タカ・イシイギャラリーでは3年ぶり、3度目の個展となる本展では、武田の代表作である「Digital Flare」の新作と、近年取り組んでいる映像、並びに映像にまつわる写真作品を展示いたします。
武田の関心は光にあり、カラーは、フレームの中で培養された光からにじみ出るプリズムカラーであって、決して絵画的色彩ではない。一見、木漏れ日の瞬く耽美な絵画的イメージに見えても、実は「Digital Flare」のシリーズは、カメラの中へ強い光を入れ、フレームの内部をいわば光の過飽和状態にする写真である。それは武田写真の純粋なモデルなのだ。高解像度で撮影された細部には、ほとんどカオスのようにうねる光のテクスチュアが詰まっている。
清水穣「批評のフィールドワーク 47:自閉と距離、あるいは箱の中の光と紙の上の光」、
『ARTiT』、ART iT 、2014年4月18日
(https://www.art-it.asia/u/admin_ed_contri7_j/5do8oj9ygqr6bxefutl3)
デジタルカメラを強い光に向けた際に生じる現象を捉える「Digital Flare」と呼ばれる一連の作品群は、光と影、あるいは偶然性といった写真の基本要素に対する作家の強い関心を礎としながら、被写体をカメラ・システムの外部にのみ見出してきた従来の写真において取り除かれるべきものであった「レンズの痕跡」を定着させるという、異端な挑戦のもとに展開されてきました。本展で展覧される新作には、武田作品に象徴的なフレアやゴースト、色のにじみに加え、これまでの作品よりも顕著に捉えられたリング状の光を多く見てとることができます。激しい光に晒されたカメラの内部が高熱で解けてしまうほどの撮影の末に生み出される作品は、その危うさゆえに魅惑的なのかもしれません。
水面を写した写真作品(2013年)から派生した映像作品は、金(=永遠の象徴)と水面(=絶えず変化し続けるものの象徴)を対比的に捉えています。映像、映像から切り出された静止画、そして写真―並べて展示されたこれらの作品は、写真という瞬間の集合体としての映像、あるいはその逆としての写真という円環性を明らかにしています。ぬめりのある質感の水が妖しく蠢く一方で、たゆたう水面の光は儚く、ここにも武田作品ならではのアンビバレントな輝きを見出すことができます。