若手アーティストの中でもトップランナーのひとりとして活躍中の銅版画家・入江明日香(1980-)。手漉き和紙に刷った銅版画を切り取ってコラージュし、水彩・墨・箔・胡粉などで彩色する独自の技法によって、東洋と西洋、現在と過去というように相対する空間や時代を一つの画面に融合させた個性溢れる入江芸術を展開しています。入江は2012年、文化庁新進芸術家海外研修制度によりフランス・パリに赴き、歴史ある銅版画専門工房アトリエ・コントルポアンで一版多色刷りを深く学び、その技法を確かなものとしました。この留学中には日本の浮世絵作品のよさを再発見し、日本の古美術へ目を向ける転機にもなりました。帰国後は、フランスで出会った子供たちや宿泊先のアパートからの風景とともに、浮世絵からの引用を思わせる人物や富士山が絵巻のように展開する作品を発表しています。
本展は、屛風の大作をはじめとする代表作に加え、創作の軌跡がうかがえるエスキースなど、高校時代から2018年までの作品約80点で構成する公立美術館としては初の大規模な個展です。パリ留学を経て輝きを増した色彩による宝石のように美しい画面、時空を超えた不思議な世界など、入江芸術をあますことなく紹介します。