1990年代から現在に至るまで、現代美術のみならず演劇界でも忘れられないアートシーンを創出してきた美術家やなぎみわ(1967~)。<エレベーター・ガール>で最初に注目を浴び、<マイ・グランドマザーズ>や<フェアリー・テール>といった一連の写真作品で世界的に評価を受け、2009年には第53回ヴェネチア・ビエンナーレ日本館代表となる一方、翌2010年には本格的に演劇プロジェクトを始めます。
大正期の日本を舞台に、新興芸術運動の揺籃を描いた「1924」三部作で話題を集めるほか、台湾で製造したステージ・トレーラーを母体に2016年から日本各地を巡礼している野外劇「日輪の翼」は、大きな感動を与えました。その舞台作品と並行し、日本神話をモチーフに桃を撮影した新作シリーズを制作しており、今回、日本で初めて発表します。
また本展に向け、京都、高松、前橋、福島の大学等と連携した「モバイル・シアター・プロジェクト」が立ち上がり、マシンによる神話世界も展覧会場に生み出されます。美術と演劇の両極を往還することで生まれるやなぎ作品は、スペクタクル性とドキュメンタリー性が交錯し、虚実を幾重にも越境していくものです。待望された約10年ぶりの本個展では、これまで以上にやなぎの汲み尽くせぬ創造の泉に迫ります。