名古屋を拠点にしながら国際的に活躍した現代美術作家、久野真の当館所蔵品を含む代表作等を紹介します。シンプルでありながら緊張感や躍動感ある久野作品の魅力を探ります。
また、素材や形の面白さに着目したワークショップを夏休みの子ども向けに開催します。
鉄、鉛、ステンレスなど金属による絵画で知られる久野真(1921年から98年)。絵具によらない独自の作品で絵画のイメージを覆し、名古屋を拠点にしながら国際的に活躍しました。
久野は、1950年代半ばに、石こうを用いた抽象絵画で注目されはじめました。50年代末からは鉄を、60年初めには鉛を使うようになり、その大胆かつ繊細な作品により国内外で評価されていきます。66年には奨学金を得てニューヨークに研究滞在し、その時に出会ったステンレスと晩年まで格闘し続けました。
直線で構成された初期のステンレス作品は、不安定な構造や錯覚を利用した表現により、不思議な緊張感や浮遊感が漂います。80年代半ばからは曲線が取り入れられ、時の流れや詩情を帯びた豊かな世界が出現していきます。
本展では初期から晩年までの代表作をはじめ、アトリエに遺された10メートルを超える大作も紹介します。また、スケッチや制作風景の写真など資料も展示し、ストイックに自らの表現を貫き通した久野のメタルワークスの軌跡をたどります。