2019年は国際博物館会議(通称ICOM)の名誉会員であった棚橋源太郎の生誕150年の節目の年になります。
今回の展覧会では、岐阜県生まれの棚橋源太郎(たなはしげんたろう/1869-1961)と彼と交流のあった岐阜ゆかりの 人々(名和靖、森金次郎、河竹繁俊、坪内逍遙ほか)を紹介します。「わが国博物館育ての親」と呼ばれる棚橋源太郎は、 岐阜県師範学校卒業後、附属小学校訓導となり理科教育に力を注ぎます。その後東京師範学校に入学、東京師範学校教諭兼訓導となり、 さらに1906年東京師範学校付属東京教育博物館の館長となり、博物館事業に携わり始めました。海外の博物館への留学、 赤十字博物館館長(1942年~1946年)などを歴任し、博物館が行う様々な活動の実践と理論の両面から尽力、戦後は博物館法の制定、 学芸員の養成にも力を注ぎました。その棚橋源太郎が影響を与えた人物は多く、また彼が影響を受けた人物も多くいます。
今日、人は、何歳になっても学び続け、成長し続ける存在として捉えられるようになりました。学びの場として、 博物館は人々の幅広い、そして深い学びへの願いに応えることが求められています。一方で過去から受け継がれてきた財産を、 後世に伝え、遺していくことも考えなければなりません。博物館がこれまで役割とされてきた資料を集めたり調査したりする活動とともに、 「いまの時代、博物館はどうあるべきか」「博物館の果たす役割は何か」ということも考える必要があります。 それは過去の博物館の研究者や実践者の研究や実践からひもとき、「今とこれから」を考えていくことにつながります。
明治、大正、昭和の時代を生きた棚橋源太郎。彼が目指していた博物館の姿、人々との交流から、私たちにとっての学び続ける生き方、 博物館の在り方を考えていく機会となれば幸いです。