絵本『いのくまさん』(小学館発行)は、画家・猪熊弦一郎(1902-1993)の作品の魅力を、こどもたちにもわかりやすく紹介した本です。本文は詩人の谷川俊太郎のシンプルかつ軽妙なタッチの言葉で綴られ、ページをめくっていくと、猪熊弦一郎の多彩で生命力にあふれた世界が広がります。本展はこの絵本をもとに構成した、大人からこどもまで楽しめる展覧会です。猪熊弦一郎は香川県に生まれ、東京美術学校(現・東京藝術大学)の藤島武二教室で西洋画を学びました。1936年に小磯良平らと新制作派協会(現・新制作協会)を結成。東京、パリ、ニューヨーク、ハワイと拠点を移しながら、マティス、ピカソ、藤田嗣治、イサム・ノグチら様々な芸術家と交友を深め、彼らに刺激を受けつつ独自の画風のを追求しました。また制作活動は幅広く『小説新潮』の表紙絵を40年間描いたほか、三越の包装紙「華ひらく」のデザインや、JR上野駅中央コンコースの壁画《自由》の制作を担ったことでも知られています。本展では、戦後の社会を彩ったデザインの仕事も併せて紹介します。「いのくまさん」が描いた魅力あふれる作品をめぐる旅をお楽しみください。