1888年8月、南フランスのアルルで、画家仲間たちとの共同生活を夢見たフィンセント・ファン・ゴッホ(1853年~1890年)は、敬愛する画家ポール・ゴーギャンのために、大きな壷にいけたひまわりの花束を描きました。ファン・ゴッホの代表作《ひまわり》です。共同生活の夢は1888年12月、ゴーギャンとの決別と共に消えてしまいましたが、ファン・ゴッホは、今度は自作の《ルーラン夫人(揺り籠を揺する女)》と組み合わせ、やがて弟のテオに宛てた書簡の中で述べられているように、《ルーラン夫人》を中央に2点の《ひまわり》を左右に並べるという計画を抱くようになります。
本展覧会では、アムステルダム、ファン・ゴッホ美術館の《ひまわり》、シカゴ美術館の《ルーラン夫人(揺り籠を揺する女)》が、損保ジャパン東郷青児美術館の《ひまわり》と共に展示され、ファン・ゴッホが夢見た「三幅対」として、日本では初めて公開されます。またファン・ゴッホや同時代の画家たちによる「花」をモティーフにした作品約40点も併せて展示され、彼らとのかかわりに触れながら、ファン・ゴッホの「花」に対する関心、中でも静物画からアトリエの装飾画を経て、そして「三幅対」の一端を担うことになった《ひまわり》に注目し、その変遷と「ひまわり」に込められたファン・ゴッホの意図を探ります。