金襴(きんらん)や緞子(どんす)、更紗(さらさ)といった海外から渡ってきた華やかな裂地(きれじ)は、書画の表具や茶道具の包みに用いられてきました。
特に茶人たちに鑑賞の対象としても重宝された「名物裂(めいぶつぎれ)」は、手鑑(てかがみ)などに貼られ大切に保存され伝わりました。このため、染織という脆弱(ぜいじゃく)な性質ながら、現在でも様々な裂地を見ることができます。
尾張徳川家では、手鑑に貼り込まれた状態のみならず反物や端切(はぎ)れの状態で、「名物裂」をはじめとする数多くの裂地を守り伝えてきました。一般にはわずかな断片でしか見られない稀少な裂地も、ときに織留(おりどめ)を含めた、良好な状態で遺されています。また、掛物や巻物の表具をはじめ、茶道具の仕覆(しふく)や御物袋(ごもつぶくろ)、能装束などに用いられた裂地からは、往時の尾張徳川家の洗練された美意識を垣間見ることができます。
本展では、尾張徳川家の裂地コレクションをひもとき、様々な裂地を紹介いたします。