時代とともに次々と新たな展開を見せるブリティッシュ・アート。特に1990年代には「ヤング・ブリティッシュ・アーティスト(YBA)」と呼ばれる世代がシーンを席巻しました。彼らの登場はメディアを巻き込み、サブ・カルチャーとも結びついてコンテンポラリー・アートの認知度を一気に押し上げる大きな要因となっています。高い技術力と優れたアーティストを発掘しサポートする独特の活動で知られる版画工房パラゴン・プレスは、このイギリスのアート・シーンを支える重要な役割を担っており、本展では、このパラゴン・プレスと共に制作した現代イギリスを代表するアーティストたちのプリント作品約120点を展観します。テリー・フロストをはじめとする戦後のブリティッシュ・アートを支えてきた美術家たちから、アニッシュ・カプーア、ビル・ウッドロウら「ニュー・ブリティッシュ・スカルプチュア」の作家たち、そして、デミアン・ハースト、ジェイク&ディノス・チャップマン、アニャ・ガラッチョらYBA世代の気鋭のアーティストたちまでを取り上げており、その中には、版画家だけでなく、画家や彫刻家、パフォーマンスや映像表現を用いる作家たちが多く含まれています。彼らがどのように版画というメディアに取り組み、新たな表現手法を獲得したのか、ブリティッシュ・アートの現在の姿とともに、ダイナミックに私たちの眼前に現れるはずです。自由な発想のもと、パラゴン・プレスとのコラボレーションを通して90年代後半以降に制作された作品から溢れる新鮮な魅力と、そこから生み出されるブリティッシュ・アートの新たなヴィジョンを存分に味わっていただけることでしょう。
なお、本展はブリティッシュ・カウンシル企画による国際巡回展の一環として開催するもので、当館が日本国内での最終展となります。