植野記念美術館の中国絵画コレクションは、1980年代を中心に創設者植野藤次郎氏が蒐集したもので、同時代の伝統的中国絵画の展開を見る上で興味深いものがあります。改革開放に向けて中国社会が大きく動きだした時期に頻繁に日中を行き来した植野氏は、中国の伝統文化の日本への紹介とともに、作家たちの創作活動を後押しする活動を行いました。その中で植野氏は多くの中国美術作品を蒐集し、当館に寄贈しました。
本展では、館蔵品のなかから花鳥画を中心に、中国近代伝統的絵画のなかで最後の文人画家として活躍した斉白石(1864年~1957年)と生前親交があった呉作人(1908年~1997)、斉白石の教えを受けた王雪濤(1903~1982)、娄師白(1918年~2010年)、許麟盧(1916年~2011)、第四子の斉良遅(1921年~2003年)、第五子の斉良巳(1923年~1988)等7人の作家の作品を紹介します。それらの作品は、斉白石の強い影響を受けながら、中国伝統的絵画の様々な特徴を取り入れつつ、色彩感や筆致に個性を発揮し、現在でも大きな支持を得ています。吉祥を表わす様々なモチーフにお国柄を感じさせつつ、ユーモアと謹厳さを漂わせた作品の数々を紹介いたします。
また併催として、旧氷上郡において近代水墨画壇の本流にあった安田家に関わる画人の作品を紹介いたします。
田能村直入の高弟として活躍した安田鴨波(1863~1929)、その弟で眼科医としても高名であった半畊(1869~1938)、鴨波の長子の栗郷(1892~1972)、次男の雲林(1895~1964)、そして栗郷の長男である虚心(1923~2009)の5人の安田家の南画家の作品を、新収蔵の作品を交えて紹介します