2019年に没後30年を迎える北海道生まれの彫刻家、砂澤ビッキ(1931-1989)。木に秘められた堂々たる生命力を掘り出す雄大な作品によって、高い評価を得ています。そうした作品の制作に打ち込むかたわらで、ビッキの彫刻家としての心をとらえていたのは、ややもすると芸術の下位に位置するものであるかのように、「エ芸的」とくくられてきた作品群でもありました。
本展では、1960年代後半から70年代の有機的な造形を追求した《テンタクル》や《アニマル》シリーズと並行して制作された虫や魚をモティーフにした作品を中心に構成します。これらの作品には、十字に交差する線、円、三角形など独特の「ビッキ文様」が彫られています。父からアイヌの小刀マキリを用いた伝統的な木彫を学び、母から着物の文様刺繍の手ほどきを受けたビッキは、複雑な線の組み合わせによる独自の文様を生み出しました。緑青を思わせる彩色とオイルステンの仕上げによって、作品は深みのある表情をたたえています。
代表作として名高い80年代の《風》や《樹華》以前の、大胆かつ精級な「もうひとつのビッキ」をご覧ください。
※本展は札幌芸術の森美術館および札幌文化芸術交流センターSCARTSとの連携企画で行うものです。