16~19世紀にかけて、オスマントルコは強大な権力を持つスルタンを中心に、ヨーロッパ・アジアに及び広大な領地を誇る大帝国として反映しました。緻密な装飾表現を特徴とする細密画(ミニアチュール)には、オスマン帝国時代の豊かな繁栄が描かれています。色鮮やかな壁画タイル、絨毯、調度品などは、イスラム世界の宗教的な背景と独特な美的感覚とを最大限に繁栄しているといえます。このように、イスラム社会に対するイメージは、スルタンに象徴される男性主体のものですが、社会や文化を支える大きな役割を担っていた女性たちの暮らしぶりなどは、これまであまり知られていません。しかし花々を愛でた女性の生活習慣は、伝統的な美術を生み出す基盤となってきました。
本展では、18~20世紀を中心に花のモティーフで彩られた華麗なドレス、装飾品、工芸品(刺繍入り布製品・金銀製食器・陶器)、カリグラフィなど約350点をテーマに沿って展示し、オスマントルコ時代の女性達の生活が垣間見られる構成になっています。2003年は「日本におけるトルコ年」。華や自然をこよなく愛したオスマントルコの女性達の暮らしを通して、華麗で繊細なトルコ美術の精華を紹介します。