80年代のアート・シーンを飾った新進の若手女性作家「超少女」の一人として注目された田嶋悦子は、南国を思わせる植物と増殖する女性身体のモチーフを組み合わせた、極彩色の釉薬が施された大規模な陶のインスタレーション作品を発表しました。大胆かつ強烈な表現は、既成の枠組みや抑圧からの解放という内なるエネルギーの発露でもありましたが、90年代に入ると、陶の表面を覆っていた釉薬(ガラス質)の皮膚は無垢の鋳造ガラスへと姿を変えます。ともに窯から生まれながら、光と人の視線を中心へと吸い込んで透過するガラスと、光も人の視線も表面で受け止めて見る者の精神世界を膨らませる陶。その融合によって、かつての爆発的なエネルギーは、陶とガラスの呼応関係の中で内と外を繋ぎながら静かに力強く循環するものへと変化していきました。本展では、90年代の「Cornucopia(コルヌコピア)」から最新作「花」までを紹介します。陶とガラスに独自の解釈を与え、しなやかに変化し続ける田嶋の生命力あふれる花々が美術館に咲きそろいます。