抹茶を点てて飲むためのうつわ「茶碗」は、茶の湯に欠かせない道具の一つです。種類が多く、かたち・大きさ・色合い・文様・肌合いなど茶碗によって特徴が異なり、茶人たちは自らの茶風にかなった茶碗を用いて茶会を開いていました。時には好みのかたちの茶碗を作らせたり、名品と名高い茶碗を蒐集するなど、茶人たちは茶碗に並々ならぬ情熱を注いでいます。道具でありながら鑑賞性も求められる茶道具のなかで、茶碗は時代の流行や茶人の美意識を最も反映した美術作品ともいえるでしょう。
この度は、サンリツ服部美術館のコレクションのなかから、茶碗や茶碗とともに伝わった箱や付属品などをご紹介し、茶碗の歴史や美意識の変遷をたどります。また、本展では国宝「白楽茶碗 銘 不二山」とともに本阿弥光悦が制作した茶碗の傑作「光悦七種」に数えられる「赤楽茶碗 銘 障子」を初公開いたします。
茶人たちがこよなく愛した名碗を通じて、茶の湯の美意識に触れていただく機会となりましたら幸いです。
※国宝「不二山」と「障子」は会期中出品の予定です。