現代日本画を代表する作家のひとりである内田あぐり(1949年-)は、身体をテーマに圧倒的な世界観を放つ作品を描き、新たな日本画の可能性を示してきました。本展では、新作を含めた近年の代表的な大型の日本画作品を中心に、美術館の3つの展示空間を活かしながら、内田あぐり作品における絵画表現の本質とその魅力を紹介します。展示室全体を圧倒する挑戦的な近年の大型作品を展開する一方で、情念を発する初期の濃密な具象作品を対置することで、ダイナミックで緊張感ある作品空間を作り出します。また初期1970 年代から現在に至るまで絵画表現の原質を示すようなドローイングの数々も展示し、その筆致から内田作品の全容を概観します。展示する1990年代後半以降の圧倒的な存在感を感じさせる大型作品は、絵画表現のなかで身体の解体と再構築を繰り返すことで、その周囲を漂う気配や情念など精神的なもの、または空間や時間など人の存在を認識させている概念的なものを、挑発的に取り入れます。今回発表する新作は、、これまで積層されてきた内田あぐりの絵画考による化身として、平原にその姿を現した一つの残丘ともよべる作品となります。