清水多嘉示は、1897年に長野県諏訪郡原村に生まれ若くして才能を発揮した美術家でした。
本学においては、1929年の帝国美術学校創設に参画し、西洋画科と彫刻科の助教授として教鞭を執り、1962年からは彫刻学科の主任教授を務めました。
そして1969年に退任するまで現在の彫刻学科における美術教育の基礎を築き、教育者としての情熱あふれる指導は多くの学生に多大な影響を与えました。
一方、わが国を代表する彫刻家として近代彫刻の発展にも貢献し、1980年には文化功労者に選ばれ、翌年には正四位勲二等瑞宝章を授与されました。清水は、その生涯にわたってデッサン・水彩画・彫刻作品はもとより、写真や書簡類、展覧会カタログ、絵葉書、さらには領収書といった伝票類まで、膨大な資料を遺しています。
本展では、彫刻家・清水多嘉示の制作活動と美術教育を含む広範な社会活動の検証を目的に、渡仏した1923年から没する前年1980年までに制作された石膏原型を中心に、彫刻作品約250点を一堂に展示すると共に、清水が遺した数千点におよぶ1945年以降の戦後期資料の全貌を展覧します。