当館では、近代の日本画や江戸時代から明治の煙草道具を中心とする細密工芸品に加え、版画、文人画から現代絵画に至るまで幅広い作品を収集しています。その数ある収蔵品の中から、本展覧会では主に静岡県や掛川市とゆかりのある現代作家の版画・油彩画と、市内出身の戦没画学生・桑原喜八郎の作品をご紹介します。
掛川市には、市内にアトリエを構え数々の作品を創作した木村鐵雄、佐々木信平、柳澤紀子などの画家がいます。また、当市を何度も訪れアート活動を行った本田健は、遠野(岩手県)の原風景をモノクロの絵の中にとどめた画家です。
桑原喜八郎は1920年、現在の掛川市高御所に生まれました。掛川中学校(現・掛川西高校)を卒業し、画家を志し1940年に東京美術学校日本画科(現・東京芸術大学)に入学します。しかし、時は第二次世界大戦のただ中、1943年に学徒出陣により召集されると、その2年後、ビルマ(現・ミャンマー)で命を落としました。当館では、日本画、油彩画、素描など大小約60点に及ぶ喜八郎の作品を収蔵しています。人物のふとした仕草や山々、田舎町の風景などを描いたそれらの作品は、画風は確立されていませんが、戦時下であることを感じさせない明るさと若者らしい初々しさにあふれています。
来年は喜八郎が生まれて100年を迎えます。当館の収蔵品をご紹介するとともに、4年という短い時間の中でひたむきに画と向き合った一人の画学生を、多くの皆さまに知って頂く機会となりますよう今回特集展示を致します。